喉を爽快に潤し、料理の味も引き立てるビール。
万人に愛される、そのおいしさの秘密はどこにあるのでしょう。
ビールを「科学」してみましょう。
宴席での乾杯はもちろん、毎夜の晩酌も「まずビール」という方は多いのではないでしょうか。季節を問わずTV画面を賑わすCMが示すように、ビールは現代の日本人に最もポピュラーな酒といえるでしょう。なぜ、ビールは万人に愛されるのか、その秘密の一端を探ってみましょう。
サッポロビールで長年ビールの開発に携わっている農学博士・渡淳二氏の監修による「ビールの科学」(講談社ブルーバックス)によれば、ビール独自のおいしさは「適度な味の深みがある中で、この味が口内で引きずられることなく、飲み終わるとさっと飲む前の状態に復帰し、次の一杯でまた新鮮なおいしさを感じる」こと。すなわち「コクとキレ」であるといいます。「コク」とは「濃い深みのある旨味」。「キレ」とは「香味の純粋さやシャープさ、軽快感やすっきり感を表現し、飲み込んだ後の香味の持続性や消失の速さ」のことです。コクとキレの度合いは、アルコール、糖類、苦味成分、アミノ酸、核酸など、ビールの中の多くの成分のバランスや相互作用によって決まるとか。一口にビールといっても、銘柄により多彩な味わいがあるのはこのためです。
また、ビールは料理を楽しむのに最も適した酒であるとも渡氏はいいます。他の酒と比べて香味が控えめで、味もあっさりしていることから「口中調味」に適しているほか、「口中の洗浄やリフレッシュメント効果も期待できるため、料理の間にビールを挟むことで毎回料理の味を新鮮に感じさせる」働きがあるのだそう。なるほど、ビールを飲みながらだと食が進んでしまうのは、こんな理由があったからなのです。
もちろん、ビールと料理をおいしく味わうには「空間」も大切な要素。とりわけ、ビールに合うおいしい料理を提供してくれるお店で味わうのは格別です。日本橋のとある酒処では、カラっと揚げて塩味を効かせた「白魚の唐揚げ」がビールに人気とか。また、昔は生ビールといえば夏に好まれたのが、今では一年中飲まれるようになったそうです。ビールはまさしく、“国民的人気飲料”といえるようです。
※取材協力 サッポロビール株式会社、いづみや